
東京は文京区にある「おとわ内科・脳神経外科クリニック」は、実家ビルの建て替えにあわせて、2008年にクリニックを開設した。 川又院長の専門は脳神経外科で、20余年大学病院で最先端の医療に携わってきた。 脳外科疾患の診断・手術を行ってきた経験を生かすとともに、日常的な内科診療と専門性の融合を目指している。
ビルの1階~3階部分を占めるクリニックは1階に受付、2階に診察室・処置室、 3階にCT検査室とカンファレンスルームという構成である。スペースは縦に長細く、 また、ビルのエレベータがクリニックを縦に貫いているため、極狭なスペースである。
脳神経外科はCTをはじめとする検査も多く、さまざまな医療機器を駆使して診察を行う。初診時の診察時間が検査等を含め平均20分と長いことも特徴である。そこで、電子カルテシステムを中心にPACS、CR、CTを院内ネットワークでつなげ、「診療の効率化」と「患者様と接する時間の増加」を目的にIT化を進めた。
専門の脳神経外科のみならず、生活習慣病を含めた内科の診療にも力を入れる 同クリニックでは、限られたスペースを有効活用するため、開設当初から電子カルテ・PACSの導入を念頭に置いたクリニックづくりを意識している。
電子カルテの選定にあたっては、何よりも企業の信頼性とサポート力を重視している。そのため、CT、レントゲン、電子カルテとIT化の中心を占める機器 ・システムを日立ブランドで統一している。
また、CT、レントゲン、エコー、心電計など、すべての画像データを電子カルテにリンクさせている。これによりアイコンをクリックするだけですべてを瞬時に呼び出せる、 電子カルテを中心とした情報の一元化および直感的な操作性を実現している。
これも日立メディカルコンピュータのHi-SEEDならではの機能であり、選定の大きなポイントになったと院長は言う。
下線のついている箇所をクリックすると該当箇所の写真を見ることができます。

待合室は、ビルの構造上8席程度のスペースしかない。そのため、完全予約ではないまでも、事前予約を電話とWeb、携帯電話で受け付けている。待合室の混雑緩和に予約システムが一役買っている。

患者様には受付時に問診票の記入をお願いしている。患者様はこの問診票を自ら持って診察を受けることになる。電子カルテを導入しているクリニックでは あるが、問診には紙を利用している。完全にペーパーレスにするよりも、患者様に記入してもらう部分は紙を残す方が効率がよいとの決断である。

受付と会計を行うための電子カルテ端末がある。画面には各患者様の状況が表示されており、 診察室、処置室の画面にも同様に表示される。決まった内容の連絡などは受付コメント機能を利用して情報連携をしているが、急ぎのやり取りは、各階に備え付けられた内線電話で行われる。

2階の診察室の前には問診票を提出するためのポストが用意され、その面前は、 中待合いとなっている。問診票の記入が済んだ患者様には診察の前の中待合いで待機していただく。診察室の前に中待合いを用意することも、混雑を緩和する工夫である。

2階の診察室のデスクには、日立メディカルコンピュータの電子カルテ「Hi-SEED」 (右のモニタ)とCTおよびCRの画像を管理する画像ファイリングシステム(左のモニタ) が配置されている。奥行きが広く、横に幅広な電子カルテの配置を想定したデスクのため、モニターで机がいっぱいになってしまうこともない。

診療履歴(1)画面に、投薬、検体検査、画像診断などの項目が時系列で配置されており、 それぞれのマークをクリックするだけで検査結果や画像が表示される。また、「SEEDパネル」 (2)は、処方薬の種類などがセットになったパネルが複数用意されており、必要な内容をワンクリックでカルテに反映することができる。パネルの内容は、使用者ごとに容易にカスタマイズができる。セットは数多く登録することができるが、頻繁に使用するセットはそれほど多くないとのことだ。

3階の検査室には、日立社製のCTとレントゲン、富士フイルム社製のCRが配置されている。各機器への患者様情報の入力(右のモニタ)は指示せんを見て看護師が実施している。それにより、医師は若干撮影位置を修正するだけ(左のモニタ)で撮影ができる。

CTで撮影された画像は、画像ファイリングシステムのサーバーにDICOM形式で管理される。あわせて、電子カルテとのリンクも貼られ、情報が一元的に管理されている。※写真右はレントゲン撮影装置

CTの右横の狭いスペースにレントゲンが設置されている。医院設計の時点で、この狭いスペースにCTとレントゲンを併設することが決まっていた。レントゲン機器はメーカーにより若干寸法が異なるため、設計段階で、ある程度医療機器を決定しておくことも大切である。
CTで撮影された画像は、画像ファイリングシステムのサーバーにDICOM形式で管理される。あわせて、電子カルテとのリンクも貼られ、情報が一元的に管理されている。表示履歴(①)にて、過去の心電図検査結果(写真左上画面右)を表示させ、患者様への説明と確認を電子カルテの画面上で行っている。

心電計(上写真画面中央)や点滴ベッドが設置されている。 また、看護師が患者様情報を把握できるように、電子カルテを参照するためのノートパソコン(下写真)が設置されている。 このパソコンは、3Fの予備の診察室に設置している電子カルテ端末を参照しているため、 カルテ端末の台数には含まれていない。ただし、予備診察室と同時に使用しないようであれば、 このパソコンでもカルテの記入が充分に行える。そうすることで導入コストを抑えることができたとのことだ。

ビル自体がコンクリート打ちっぱなしのモダンな造りであり、その外観と統一感をもたせる必要性があった。ガラス張りで、クリニックを告知するシールで覆われた、いわゆる一般的なスタイルではない。窓面を少なくし、通りがかった住民に大型モニターを通して情報提供をするなど外観のモダンさを演出している。

クリニックのエントランスと、ビル自体の入り口が同じため、外観同様、モダンさを意識したエントランスとなっている。スポット照明や観葉植物などもビル全体との調和への工夫である。
川又院長の専門が脳神経外科ということもあり、電子カルテ導入について最も重要視していたのは、CT、レントゲン、エコー、心電計などの検査情報の一元管理が可能かという点である。診察、検査、診断、患者様への説明という思いが、一連の診察の流れを電子カルテ・PACSを用いてスムーズに行える電子カルテ導入の動機となったからである。
電子カルテ導入の効果について川又院長は次のように述べる。
「電子カルテと医療機器は一体的に選ばなくては意味がない。これらがすべて連携していなければ、電子カルテ導入の効果は半減する」 「さまざまな電子カルテを見たが、同一ブランドで、これらが実現できるメーカー は少なく、日立グループにはその点で安心感があった」
日立メディカルコンピュータの「Hi-SEED」は、医療機器との連動性を重要視する 医師にとってうってつけの機能を備えた電子カルテであった。電子カルテを中心に医療機器連携をスムーズにしたい、その背景には患者との診療時間、 インフォームドコンセントの時間を十分にとりたいと考える、院長のこだわりがうかがえる。
よく電子カルテに気をとられ、患者様の方を向かなくなることを電子カルテ導入のデメリットとして挙げる医師が多くいる。しかしながら、医療機器との連動が実施されれば、電子カルテの導入が、かえって患者様とのコミュニケーションの時間を多く生み出しているのだと感じられた好事例であった。
(執筆・取材:メディプラザ統括マネージャー 大西大輔)